加工屋の場所。そして自分たちが何者なのか。
口を固く閉ざし続けたものの、拷問の果にその全てをとうとう打ち明けた。
何故そこまで口を開かなかったのか。それはあることを恐れていたからだった。
「捕まった時点で俺らは終わってたのさ……バラしても地獄、バラさなくても地獄ってねえ」
長は憔悴した様子で呟いた。
「……これから、どうすんのさ」
隣に座り込んでいた黒縄が長に問うた。
「仮に解放してくれたって、どこにも行くアテなんざ無え。それどころか国に帰ったって……こんな失態やらかしちまったと『あの方』に知れれば殺されちまう」
「そう、だな」
「……ぁあ、そうだ、」
長が何かを思い出したように、牢の片隅の土を掘り返した。
中から出てきたのは、一本の巻物だった。
「ほれ」
それを黒縄に投げ渡す。
「これ、おいらの……」
「返す。お前はもう自由だ」
「……は?何さいきなり」
「言った通りだ。お前がわざわざ俺らの地獄に付き合うこたぁ無ぇ」
「い、今更何を……!」
黒縄の顔に浮かんだのは、離別の悲しみではなく、怒りだった。
「あんたも……あんたもおいらを……!」
「勘違いすんな。俺は本当にお前を逃がす気で言ってんだよ。役人共が目ぇ離してる今のうちに行っちまいな」
「……」
「ああ、でも最後に頼みがある。……このままやられっぱなしで終わるのもシャクだからなァ」
長は黒縄に耳打ちした。
黒縄は頼みを聞き届け、巻物をーー自身が描かれた絵巻物を握る手を震わせながら、ない交ぜの感情を込めて長を睨み付けた。
そして何かを振り切るようにばっと踵を返し、本来の姿に化け、絵巻物と共に牢を抜け出た。
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