1-9.5話




「いーーーやーーーだーーー!!!」

 

「大丈夫だって!死にやしないから!」

 

 

 

宿舎に響き渡る、断末魔にも似た叫び声。

 

その主は霜月だった。

 

 

 

「だ、だって、水!!」

 

「風呂に浸かるくらいなら大丈夫だよって言ってるじゃないかぁ」

 

 

 

霜月は部屋の戸口にしがみ付き、それを朱燕が引き剥がそうとひたすら引っ張っていた。

 

 

 

「やだ!!死にたくねえー!!」

 

「だから死なないって!命に関わるのはあくまで万気同士の話であって、普通に生活しながら触れる水は問題無いの!だからほら!さっさと風呂に行く!」

 

「やぁぁああああだぁぁああああ!!」

 

 

 

なかなか言うことを聞かない霜月。

 

騒ぎを聞き付け、食事の片付けを手伝っていた翳とアラクも駆け付けてきた。

 

 

 

「うるさいです」

 

「何事だ……」

 

「霜月くん、水を怖がってお風呂に入りたがらないんだよー。このままじゃ臭い臭いになっちゃうよー?」

 

 

 

霜月は何を言われても半泣きで首を横に振るばかり。

 

その様子を見ながら、アラクがふと何かを思いついた。

 

 

 

「……霜月」

 

 

 

霜月に歩み寄り、一言。

 

 

 

「風呂に行かねば水をぶっ掛けるぞ」

 

 

 

その言葉に霜月は凍り付き、慌てて戸口から手を離した。

 

 

 

「やだ!!やだ!!行くからやめてくれえ!!」

 

「よし。……朱燕、後は任せた」

 

「……了解」

 

 

 

朱燕は笑い出しそうなのを堪えながら、そのまま霜月を風呂場まで引きずっていった。

 

 

 

「……まさか本当に引っ掛かるとはな」

 

「ドジな人ですね」

 

 

 

程なくして、風呂場の方からけたたましい悲鳴が聞こえてきたのだった。



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コメント: 2
  • #1

    tamatyanX (日曜日, 09 11月 2014 16:27)

    え、ええええええーーーー(爆笑)

  • #2

    meishinkatari-sousaku (日曜日, 09 11月 2014 17:30)

    >>tamatyanXさん
    コメント有難うございます!
    水がとても苦手(というか怖い)な霜月でしたとさ!w